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念の為、扉に顔を近づけて聞き耳を立てた。……無音だ。椎名の呼吸の音がこの空間で最も大きな音だろう。
ドアノブを回して数センチメートルだけ扉を開く。中の様子を観察した。窓から月の白さが差し込み室内を照らしている。
床に敷かれた絨毯は毛並みが良く、厚みがありそうだ。椎名はそっと室内に侵入して、周囲を確認する。
両脇の壁は書棚で埋め尽くされていた。窓際には天板が大きい豪華な机が置かれている。
椎名は真っ直ぐその机に向かった。窓側が背中になるように椅子が置かれている。目的の物は机の下に置かれている金庫の中にあるはずだ。
机の下を覗き込むと早々に金庫が視界に入る。
椎名は身を屈めると、そこで始めてペンライトを取り出した。
頑丈そうな古いダイヤル式の金庫を指先で触れ、回し始める。ダイヤルにはカタカナが彫られていた。
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