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3章 昔話
魔術師ハルバート・ルミナスは魔術師育成学園を卒業後、二十歳でアクリル宮廷に配属された。イシス帝国を補佐的に支えている貿易重視の街。カタル国の首都アリワナ街で四年過ごすこととなる。
アクリル宮廷配属の目的は馬の世話と書記取り扱いであった。
書記取り扱いという仕事は一度つけばへまさえしない限り一生を生きることができると言われる職業であった。
ハルバートは愛称をハルとつけられ王族貴族にとても可愛がられて生活していた。城に部屋を与えられ使用人とは別の生活をさせられていたのである。
職について二年目の秋口の話だった。
宮廷で不穏な空気が流れていた。
今年二十歳になる姫が行方不明になったのだ。
兵士も家臣も王も妃もアクリル城内がこぞって姫の姿を探したがどこにも見当たらなかった。
姫の部屋は荒らされることもなく整然としており、バルコニーへ続く硝子戸にも鍵はしっかりかけられていた。
ハルバートは第一姫のセピアがアリワナ街に出たのではないかと推測し、数名の騎士と共にアクリル城を出た。
真夜中過ぎになって、アリワナ街でも治安が悪いとされている西区内でひとりの少女が意識不明のまま倒れているところを発見した。
セピアの捜索もさながらその娘を病院へ運ぶと離脱したハルバートはその娘からとんでもないことを聞くことになる。
「私は、セピアです」
抱えた腕の中で娘は涙目で訴えた。
茶色い瞳の少女は、お願い信じてとハルバートのワイシャツを掴んで言った。
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