1人が本棚に入れています
本棚に追加
/45ページ
国と国が争うほどの大きな戦争が行われる。
センスの暮らす街でも、徴兵令が出されて兵士として若者は駆り出される事となった。
センスは戦闘経験など持たないただの一般人だが、この街に暮らす多くの者もそうだろう。
招集の鐘が鳴らされる。
センスは餞別に渡された自害用のナイフを鞄へとしまった。
集まっているのは顔見知りばかりだった。
まずは送る戦場を決めるらしく、辞める前の職業を聞いているようだ。
ボードを持った若い騎士がセンスの前にもやってくる。
騎士の鎧は家畜の革が基調となっている。
戦争をする国としての装備の中では貧弱の部類だ。
本気で勝ちたいならば鉄装備で固めるものだ。
つまりは、この戦争の目的は勝つことではなく戦争そのものに有るのだろう。
「貴様、名は何という?」
「センス・アリマセンネーです」
「馬鹿にしているのか!?」
この問答も生まれてこのかた何度目だろうか。
「本名なんですぅ!」
センスの必死の剣幕に押され、騎士は咳払いして有耶無耶にした。
「では、前の職業は何だったか答えろ」
「前の職業はーー」
じんわりと眦が熱くなる。
溢れそうになる雫をこらえ、答えた。
「ナイトフロントをしていました」
最初のコメントを投稿しよう!