序章【徴兵令】

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国と国が争うほどの大きな戦争が行われる。 センスの暮らす街でも、徴兵令が出されて兵士として若者は駆り出される事となった。 センスは戦闘経験など持たないただの一般人だが、この街に暮らす多くの者もそうだろう。 招集の鐘が鳴らされる。 センスは餞別に渡された自害用のナイフを鞄へとしまった。 集まっているのは顔見知りばかりだった。 まずは送る戦場を決めるらしく、辞める前の職業を聞いているようだ。 ボードを持った若い騎士がセンスの前にもやってくる。 騎士の鎧は家畜の革が基調となっている。 戦争をする国としての装備の中では貧弱の部類だ。 本気で勝ちたいならば鉄装備で固めるものだ。 つまりは、この戦争の目的は勝つことではなく戦争そのものに有るのだろう。 「貴様、名は何という?」 「センス・アリマセンネーです」 「馬鹿にしているのか!?」 この問答も生まれてこのかた何度目だろうか。 「本名なんですぅ!」 センスの必死の剣幕に押され、騎士は咳払いして有耶無耶にした。 「では、前の職業は何だったか答えろ」 「前の職業はーー」 じんわりと眦が熱くなる。 溢れそうになる雫をこらえ、答えた。 「ナイトフロントをしていました」
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