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──そして、今に至る。 「だめだめだめやっぱり無理無理いいい!」 「若葉様!若葉様!落ちます!死にます!」 二人の喚き声が空で木霊(こだま)す。 前方にいる若葉は些か、眉根を寄せ鬱陶しそうに首を擡げている。 「落ちませぬ、死にませぬ。仙華はいい加減慣れなさい」 もはや辛辣な態度になってくるのも致し方ない。こちとら耳と脳に響いて辛くて仕方がないのだ。 そんな若葉達は今、お察しの通り空の上だ。碧綺が空をとてつもない早さで駈けていく。 「あれですか、主様」 そんな喚き声で阿鼻叫喚な中、碧綺の艷やかな声がやけに響いた。問われた若葉は鳥の指す視線の方へ己のそれを向けると、湖が、大きな大きな湖が山の向こうに見えた。 「嗚呼、懐かしい。そうだよ、近づけば藤のなる木がある筈だから其処を目指して頂戴」 「承知」 ──ばさり、ばさり。 羽を先程より一層強く大きく羽ばたかせる。それと同時に二人の叫びも強くなる。だがあと少しでそれも終わる筈だ、辛抱、辛抱と自分に言い聞かせ耐える若葉。 そんな三者と一羽に似つかわしくない、美しい湖はどこまでも澄んでいた。
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