プロローグ

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          1  埃が舞っていてカビ臭い。日当たりも悪くて冬寒そうだし夏は暑そう。  開け放たれたドアの先を見て、あたしが真っ先に思い浮かべた感想がこれだった。  場所は、この春からあたしの通う新たな学舎(まなびや)となった柿根沢(かきねざわ)高校の旧校舎。  その一階の最奥にある、物置部屋……にしか見えない一室。  元はちゃんとした普通の教室であったのだろうこの場所は、どことなく当時の雰囲気を(にじ)ませたまま、長い時間静寂の中へ漬け込まれ、時間の流れという概念の下に深く埋もれてしまっているようなイメージを与えてくる。
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