火曜日、昼下がりの午後。

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いつもなら長居して帰るはずの常連客が店を後にした姿を見ながら、彼は真山との会話を思い出していた。 『店長、私…本当は此処を辞めたくなかったんですけど、辞めます。』 『え、どうしてだい?大学の方が忙しくなったのかい?』 『いえ…そんな事は無いんですけど、毎週火曜日に来る男の人いるじゃないですか。』 『…あぁ、彼ね。毎週決まって火曜日に来るよね、そう言えば。』 『はい…あの人が、気持ち悪くて。いっつも、私を見てくるんです。毎週火曜日にしか来ないし。勘違いならいいんですけど、絶対勘違いじゃないし。』 心底嫌そうに顔を歪めた真山の顔を思い出しながら、確かに彼女の言っていた通りだったなと納得した彼は、彼女の選択は間違ってはいなかったのだなと改めて実感していた。 『…せっかくの新規のお客様だからって、優しい言葉なんて掛けなきゃ良かった。』 そんな言葉を思い出しながら、また1人常連客が減ったな…と、物思いに耽る彼だった。
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