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番外編 [1]
「今日俺んち親遅いんですけど来ませんか?」
太一の質問に大きく心臓が跳ねる。
わざわざ親が遅いことを説明してくるあたりからして俺たちの進展を期待している事がうかがい知れる。
太一と付き合ってから一か月が経とうとしていた。
何度もネットで男同士のやり方を調べた。
男女のAVを見るよりも男性同士のAVは生々しかった。
正直言うと男女のAVの方が魅力的だったし興奮もした。
本当に太一とできるのかも少し心配になった位だった。
俺は覚悟を決めて太一に頷いて見せる。
太一の部屋に案内され緊張感が増す。
太一がベッドに正座するものだから俺もつられてベッドに座る。
もし行為を始めて俺が勃たずに行為を中止しなければいけなくなると太一を傷つける結果になるかもしれない。
だからこそ始める前に気持ちは太一に向いているが体がついていけるか不安に思っていることを伝えておくつもりでいた。
太一にとってはどちらもショックに違いないかもしれないが、心は太一に向いていることを理解しておいてほしかった。
「太一…。」
息を大きく吸って話しはじめようとする。
「先輩!先風呂入ります?」
俺の声をかき消すように太一の言葉が重なる。
俺は気分が削がれ太一の言うとおりに先に風呂に入らせてもらうことにした。
予習はしてきたが実際に行動に移すと思うと心臓が高鳴る。
男同士で女側の受けというのは負担が大きいと書いてあった。
普通は出口専門の場所に通常より太いものを入れるのだ。
愛があってもそう簡単にできる行為ではないと思う。
する度に快感を伴うとも書いてあったが自分にそんなテクニックがあるとも思えない。
痛い思いをさせてしまうのも気が引けた。
試しに自分のお尻に指を当ててみる。
指一本くらいなら入りそうな気もするが力を込める勇気がない。
太一はどう思ってるんだろうか…。
俺はシャワーを浴びてタオルで拭く間、太一の事ばかりを考えていた。
「風呂。ありがとう。」
なんとなく風呂上り姿を見られるのが恥ずかしくて太一と目を合わせることができない。
「先輩!明日休みですし泊まっていってくださいね!!」
緊張感を感じさせない太一の振る舞いに圧倒されるばかりだった。
太一が風呂に行っている間に親に泊まりの連絡を入れる。
太一の所に泊まるとは言わずに『友達の所に泊まる』と言ったのは少し後ろめたい気持ちがあるからだろう。
太一の部屋着を借りたは良いがこの時期に半袖短パンは少し寒い。
暖房が入れられていてもなんとなく布の表面積が少ないのは不安になる。
太一が帰ってくる前にもう一度予習しておくかな…。
スマホを手に取った瞬間、太一の部屋の扉が開かれる。
足音にも気が付かなかった。
それほどに緊張しているのだろう。
太一は濡れた頭にタオルを乗せたままベッドに腰掛けた俺の隣に座る。
毛先からはまだ水が滴っている。
「ちゃんと拭け。子供かよ。」
いつも通りの太一に笑いながらタオルで太一の頭を拭く。
タオル越しに湿った感触と太一の体温を感じる。
ガシガシと乱暴に頭を拭いていると太一の手が俺の手を掴む。
大人しく頭を拭かれていた太一が急に腰を上げ振り返りキスをしてくる。
予期していなかった行動に胸が大きく音を立てる。
濡れた髪の毛が額に当たり冷たい。
濡れたタオルが床に落ちたのが分かり拾おうとするがまた唇を塞がれて押し倒される。
ベッドに倒れこみ覆いかぶさるように太一が乗っかってくる。
触れるだけのキスから舌を滑り込めせてくる太一。
歯磨き粉の味。
自分だけちゃっかり歯磨いてきやがったのか。
そんなことを考える余裕がまだあった。
太一と舌をからませていると下半身が反応していることが分かる。
いい雰囲気になっているのは分かっているが自分の気持ちを話さずに事に及ぶのはいけない事のように思えて太一の肩を突き放すようにそっと押した。
「なるほど。先輩はもしかしたら勃たないかもしれないと。でも気持ちは俺にあるから安心しろって事すね!」
あまりにも物わかりのいい太一に驚く。
もっと『愛が足りない』や『根性で勃たせろ』など無茶を言ってくると思っていた。
「大丈夫っすよ!先輩は勃たなくとも事は済みますんで!やっぱり最初は痛いみたいなんで萎えるのは仕方ないっすよ!」
太一の言っている意味がよく分からないが俺の事を思ってくれていることは明白だった。
気を取り直してキスをする。
太一はわざと音を立ててキスをしてくる。
唾液が絡まる音に顔が熱くなる。
首元にキスをされ体が震える。
太一にシャツを脱がされ上半身が裸になる。
俺にまたがったまま上から見下ろすようにマジマジと見てくるのに耐えられなくて両腕で体を隠す。
「全部見せてください。」
隠していた両腕を掴まれいきなり乳首を舐められる。
「ひゃっ。」
こそばゆい感じがして声が漏れる。
太一は俺の腕を押さえたまま舌先で乳首を舐めてくる。
「んんぅ…。」
気持ちいいわけではないがムズムズとする。
感触よりも少し下を向けば太一が舌を伸ばして俺の乳首を舐めているという視覚的な興奮が抑えられなかった。
「たいちっ。それ。やめて。」
恥ずかしくなってきて太一に言うと太一は口に乳首を含み吸いながら歯を立てた。
「んゃぁっ。」
自分の声とは思えない声が口から洩れる。
唇を離した太一は暑いのか自分のシャツも脱ぎベッドの外に投げる。
見上げる形になりながら太一の体を見る。
白く細い体。
俺よりも華奢で強く抱きしめたら簡単に折れてしまいそうだ。
大切にしたい。
そう思った瞬間また下半身に血が集まる。
太一がキスするのにまた覆いかぶさってくる。
先程とは違い、肌と肌が触れ合う。
太一の乳首が俺の体に触れビクッと反応してしまう。
自分の体じゃないみたいに全身が敏感になっていた。
太一がズボンに手を入れてくる。
俺のモノに触れるまで体を強張らせてまつ。
早く触って欲しいのに太一は焦らすように腰や内股を撫でるように触ってくる。
「先輩も触ってください。」
太一の声で我に返る。
今の今まで全て太一にリードされているではないか。
俺は焦って太一の下半身に手を伸ばす。
場所はすぐに分かった。
スウェットの上からでもハッキリと分かる存在感。
触れると痛みを感じそうなくらいに大きくなっていた。
薄いスウェットの上から優しく撫でる。
今まで余裕のあった太一の顔が崩れる。
そんな太一がもっと見たくて動かす手を速める。
「直接触ってください。」
苦しそうに言いながらズボンとパンツを脱ぐ太一。
初めて見たわけではないがやはりおれのモノより大きい。
「先輩も…。」
そう言って無理やり脱がそうとしてくる太一をなだめながら自分でズボンを脱ぐ。
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