01:旅人と王子様

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『第3迷宮 パーティー募集』  何人かの受付嬢が愛想を振り撒いて依頼書片手に並んでいる屈強な男達に仕事を割り振っていたり、依頼をしにきた平民が隅っこの受付嬢に申請したりとてんやわんやしているギルド内にて。  これまた屈強な男達が壁一面に広がる掲示板を食い入るように見ている中、背は女にしては高めだが小柄な身体の旅人が彼らに負けないくらいの眼力で同じく食い入るようにそれを眺めていた。  目の前の掲示板のド真ん中にでかでかと張られた紙。  下には小さな文字で帝国騎士団と書かれている。  精鋭揃いの帝国騎士団が市民を募集するなんて、よっぽど人手が足りないんだなぁ。  まぁ私には関係ないや。迷宮攻略なんて興味ない。  そんな危険な仕事よりも楽な仕事がしたい。  え?早々にフラグ折るなって?  だって迷宮攻略なんてパワーが有り余ってる脳筋どもがやることじゃん。  私はか弱い女の子なのよ。  そんな危険に突っ込みたくないです。  という訳で安全な採取あたりの仕事はどこですかいなっと。  掲示板の隅から隅までくまなく目を通す。  紙という紙でびっちり埋め尽くされたそこには上から順にX、SS、S、A、B、C、D、E、Fランクの様々な仕事内容が記されており、その下に報酬が書かれている。  ちなみに冒険者も同じくランクで分けられている。  冒険者だけでなく貴族や王族などの権力者もランク分けされているのだが、冒険者と違って権力者は強制だ。  冒険者は気軽に誰でもなれる職業でギルドカードも無料で発行できるが、権力者は有料なうえに公衆の面前で仰々しくギルドカードを見せつけないといけないらしい。え、なにその公開処刑。  ギルドカードを発行したときは誰でも一番下のランク、つまりFランクの表示だ。仕事をこなせばそれだけランクアップに繋がる。  つまり権力者は公衆の面前で格下アピールをしなくちゃいかん訳だ。権力者のプライドズタボロやん。  そんでもって基本自分と同じランク、またはその下のランクの依頼しか受けられない。  え?私はどのランクかって?  ふふふ。見てのお楽しみー。  うわ、見事に迷宮攻略と魔物討伐しかない。  どっちも血生臭いじゃんかー。それに重労働じゃんかー。  採取とか簡単なやつがいいのにさー。  ひとつも採取がないってどういうこと?  うーん、魔物討伐もできなくはないんだけど……うーん……  私の能力のこともあるし、極力避けたい。  うむ、仕方にゃい。  幸いまだお金は余裕があるし、また明日来よう。  そんときに採取の仕事があればいいなぁとぼんやり思いながら、掲示板の前に群がる人々を掻き分けて抜け出した。  ごろん、と大通りに寝転がる。  大通りといってもあまり人は通ってない。  旅商人とこの国の人間がちらほら見える程度。  ふふふ。それも結構距離があるから私に気付いてる人は皆無。寝転がり放題なのだ。  すうっと空気を吸い込む。  うん。この国の空気は美味い!  位置的にここが一番澄んでる。  長いこと旅してきたけど、こんなに空気が澄んでるところはそうそうない。  しばらくはここでのんびりしてくのもいいかも。  ぽかぽかの日差しに微睡んでいく。  やがて少しずつ意識が沈んだ。 ―――――――――――――――――――――――  目を覚ますとそこには見覚えのない天井が広がっていた。
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