歴史は自分で作れ

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(あっちぃな…) 昨夜もバイトで寝不足だ 夏休みの為に無理にシフトを詰め込んできたからだな 机に顔を埋めるように伏せ、カツカツと黒板に書き込む音と、ジージーとせっかちな蝉の鳴き声だけが聞こえている 「えー、これが関ヶ原の合戦だな。みんなも名前ぐらいは聞いた事があるだろ?」 「聞いた事ある~」 「徳川家康vs石田三成!」 数人の生徒がざわざわと発言する 俺は目を閉じたまま聞き流していた 「そうだな。いわゆる天下分け目の合戦だ。田中の言った様に徳川家康と石田三成の戦いで、勝った方が後の幕府を作って日本を治めていく訳だが、」 「徳川の圧勝でした!」 歴史好きの田中が得意げに口を挟む 「待て待て田中~」 クスクスと教室がざわめきかけた所で教師が話を続けた 「田中の言った通り徳川家康が勝った訳だが、なぜ徳川が勝つ事ができたのか?そこをしっかり覚えていくぞ」 歴史に興味のない俺は、そんなやり取りをラジオでも聴いている感覚でいた (これが終われば昼休みだ、いつもの場所でガチで寝よう…) 教師の熱弁は続いている。田中が目を輝かせている姿は想像するまでもなく伝わってくる。寝落ち寸前の俺には、教師の話し声が途切れ途切れ耳に届いていた 「えー、ここで小早川秀秋が寝返った訳だ」 (「違う……」) 一瞬、聞き覚えのない声が聞こえた気がした (「違う…そうじゃない……」) 確かにまた聞こえた うっすら目を開けて教室を見渡したが、いつもと変わらぬ日常があるだけだった (空耳が聞こえるとは、相当疲れてんな俺……)
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