(後日談-大事なもの)

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  『花、考えて。日本では確かにそういう人たちを受け入れることが難しい。それは国民性だよね? じゃ、人を国民性で区切るのかい? 海を渡るだけで人の繋がり方が変わると思っている? その彼は、苦しんでないと思うかい? 君の言う、「人に認められない」ということで。それでも生きていくというのは、この国ではとても勇気の要ることだ。君みたいな人がほとんどだからね。マイボーイ。僕は君に、その彼を"人"として見てほしい。そういう人間になってほしい』 「今度……俺の実家に一緒に行かないか? きっとジェイはホッとするよ、父さんと話せば。俺とはゆっくりやっていこう。だから、俺の取った態度、許してほしい」 「俺、嬉しい。そう言ってもらえて。時間、いい。そう思ってくれただけでいい」 「お前はさ、もっと欲張っていいよ。もう少し経ったらさ、聞かせてくれよ、部長とのこと。あ、興味本位じゃない。そういうんじゃなくて、精神的なこと。お前にとってどういう人なのか。どれほど大切なのか。知りたいと思う。けど、今じゃない」 「うん。うん、聞いてほしい。花さんには……聞いてほしいんだ。辛かったこと、たくさんあったから」 「分かった。今日はこれで帰る。明後日、また仕事でよろしく。じゃな」  立ち上がった花が手を差し出した。それを頬を濡らしたままジェイは見上げた。  花は急かさなかった。ジェイがゆっくり立ち上がる。花の手を握った、 「お前が大事だ。それは変わらなかった、この1ヶ月半」 「あり、がと……」 「じゃな」  
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