千客万来 栞堂

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おじいちゃんの本屋さん、お店の名前は"栞堂" 町中のちょっと奥まった所にひっそりとたたずむ、赤レンガの壁とガラスの扉が特徴の古い本屋さん。 建物は古いけど、店内の床、壁、天井まで届く巨大とも言える本棚は白く、年期が入って少しくすんだ色合いで、古めかしさよりも年月の長さ、歴史を感じさせるおもむきがある。きれい好きというか、こまめなおじいちゃんの性格が出てる、小綺麗な店内だ。 取り扱っている書籍は、古文書や歴史書、古代文献のような古いものから、フィクション、ノンフィクション、純文学、ファンタジー、独白本となんでも様々なジャンルの小説、少年少女青年漫画、自己啓発本、ビジネス書、お料理に裁縫、園芸、車に旅行などの雑誌、幼児向け絵本……その他にも数えきれないジャンルの蔵書がある。 私、栞 めくるは、子どもの頃からおじいちゃんの本屋さんが大好きだった。無口なおじいちゃんが、毎日棚に並んだ本の背表紙や平台に配置された本の表紙を、年期の入ったハタキでパタパタしているのを見ているのが好きだった。 でも、中学を卒業するまで毎日毎日栞堂に通い詰めていたけど、不思議なことにお客さんの姿を見たことは、ほとんどなかった。
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