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「何だったんだよ、さっきのは!」
ステージが終わって、他出演者との共用のシャワールームで体を洗って、ちゃんとトイレで用を足して、ネオンが持ってきてくれていた部屋着みたいなシャツとスエットに着替えて、冷たい水を一口飲んでから、俺は二人の前で叫んだ。
「何だったのか、って、説明しろってば!」
「………」
ネオンはソファにぐったりだ。眠そうな顔で何故か満足げに笑っている。
偉音はその隣で脚を組み、無表情で俺を見ていた。まるで玉座に座る王のように……こいつこそがあの椅子に座った方が良かったんじゃないか。
「だから、説明を……!」
「過激なこともやると言ったはずだ。お前は座っていればいいとも言った」
「言葉が足りなすぎるだろ! 確かに座ってただけだけど、あんな……変態じみたことをやらされるなんて一言も言ってなかったじゃんか!」
「金が振り込まれればそんな文句も引っ込むだろうよ。……じゃ、飯行くぞ。起きろネオン」
「か、金の話じゃねえってば!」
「そういや、お前がグラスに出したアレな」
ソファから腰を上げ、偉音が言った。
「変態の客に二十万で売れたぞ。良かったな、全額お前のモンだ」
「は、……はあっ?」
「本職より稼げるんじゃねえの。小便するだけで億万長者だぞ、羨ましい限りだぜ。……でも、お前が金の問題じゃねえって言うなら俺達で貰っておく」
「えっ!」
「俺のも売れないかなぁ」
だるそうに立ち上がったネオンが、偉音の肩にもたれてぼやく。
「お前のはもうそんな価値ねえだろ」
「ムカつく」
「取り敢えず宇咲の小便代で焼肉でも食いに行くか」
さっさと楽屋を出て行ってしまう二人の後を慌てて追いながら、俺は心の底から叫んだ。
「駄目だっ、やめろ馬鹿! 俺の金を使うなあぁ──っ!」
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