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いやいや、ダメだ、話題を変えよう。
「あの、あなたは、お仕事は……?」
「あ?」
しまった眉間に皺が寄った。
触れちゃいけない事だったか──でも、触れちゃいけない仕事ってなんだ?
「2年前に体を壊してから、マトモな仕事に就いてねえ……情けねぇだろ」
えっ……
いや、そんな。
「このトシでフリーターだ。しかも体力的に週4が限度だな」
「……仕方ないじゃないですか」
思わず俯いた。そんな俺に構わず、男が語を継ぐ。
「手術すりゃ、いくらかマシになるらしいんだが、保険に入ってなくてな。定期受診もおろそかにしちまってる」
「え、でも、ちゃんと治さないと仕事だってできないじゃないですか。体のほうが大事でしょ」
……俺、なに言ってんだ? これから殺す相手に。
沈黙が降りた。どちらも何も言わず、ただ時折ふーっと煙を吐き出す。
なぜ、この人が。
殺されなきゃならないんだろう。
視線を落とした先に、男の傘があった。
「傘……」
「ん?」
「今日、いい天気なのに、なんで傘持ってるんですか?」
男の視線が傘に向いた。
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