転生シンデレラは午前3時まで

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 世界的な童話の代表格の一つと言えるシンデレラ。そのシンデレラ、その者に転生した女がいた。全国を制したばかりの空手家であった。  童話の通りに母が亡くなり、再婚した途端に父が亡くなった。残された転生シンデレラには、お義母様と2人の義姉によるいじめが始まった。童話通りに進んだのはそこまでだった。  朝日が昇る前に起きることを強要され、炊事、洗濯、掃除すべてを転生シンデレラは押し付けられた。この先に王子様との出会いが待っている。どんなにツラいことにも、そう思うと耐えられるはずだった。  だけど、それらすべてを難なくこなした転生シンデレラ。前世の父に修行と称して仕込まれ、大して苦労とも思わずに過ごせていた。そんな転生シンデレラにも、一つだけ我慢できないことが。それは前世の父と日課にしていた空手の組手が出来ないこと。  可憐で華奢な体に変わっても、魂に染み付いた空手家の精神が疼くのだ。殴りたくて、蹴りたくて、強者と戦いたい気持ちが抑えきれない。そんな時に意地悪なお義母様がぶちキレた。発端は転生シンデレラの作った筋肉強化を目的とした料理であった。 「何で食事が1日に6回なのよ。何で鶏のささみ、ばっかり食べなきゃなんないのよ」 「お義母様、食事回数を増やすと効率よく栄養素を吸収できますの。6回が特にベスト。ささみはタンパク質はもちろん、マイナーな栄養素だって豊富。筋トレ食材の常識ですわ」  得意げな転生シンデレラの筋肉談義。お義母様は握りしめた拳を震わせて、ささみが乗ったままのお皿を投げつけた。狙った的はもちろん転生シンデレラ。それをあっさりかわされ、飛んで行ったのは自身を描いた肖像画。  2人の義姉も参戦し、ささみのお皿を投げつける。それもかわす転生シンデレラ。やっぱり、飛んでいくのはお義母様の肖像画。テーブルの皿が無くなるまで投げても当たらずに、とうとうお義母様は手を挙げた。  当然、温室育ちで甘やかされて育ったお義母様の攻撃なんて当たるはずもなく、転生シンデレラによってあっさりとガードされてしまう。そこで終われば良かったのだけれど、筋肉談議とお皿の投げ込みが、空手家の本能を呼び覚ましていた転生シンデレラ。お義母様のみぞうちを見事にとらえてしまう。全国を制した正拳突きであった。  悶絶どころか泡を吹き、白目をむいて、気絶したお義母様。目の当たりにした義姉たちは恐れおののき立場は一転。震えあがって、何も言っていないのにあれこれ世話をしてくれるようになってしまった。
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