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御曹司、誕生
「んぎゃあ」
「ほぎゃあ」
「いい子だ、泣き声もしっかりして」
「あなた」
「ありがとう、いい子を産んでくれて。お前とこの子を幸せにするからな」
「はい…… ありがとう」
11月19日 父、河野兼介。母、晶子。その長男として生まれた河野蓮司。
家は「河野コンツェルン」と呼ばれる堂々たる資産家。河野の血縁で事業は幾つも起ち上げているが、当主の兼介が手掛ける事業の中で今力を入れているのは時代を追う『コウノ・ソリューションズ株式会社』。
先々代から始まった事業だが、鳴かず飛ばずだったのを兼介が形にした。経営が乗り始めてから、兼介の入れ込み方は普通ではない。
規模としてはIT業界の中堅どころではあるが、ソフトウェア開発において業界で知らぬ者は無い。
幸せと成功を約束された蓮司の手には、輝かしい未来がしっかりと握られているはずだった。
父、兼介さえ時を経ても変わらずにいたなら。
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