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「ないない、俺がモテるとかあり得ない」
僕は手を振り、白石の言葉を否定した。
「俺がイケメンなら、たとえ白石が信也と付き合っているって分かっていても、すぐに白石に告りにいくよ。
自分がそんなイケメンじゃない、って分かってるから、一人で本読んだりとかしてる訳」
「有岡くん、アタシとか根本くん以外にも積極的に話し掛けた方がいいよ」
肩をすくめながら白石が言った、その時であった。
先程、僕と白石の話の中で名前の挙がった根本信也が、ドスドスと足音を立てながら教室へと入ってきた。
「よぉ、タクヤぁ。
朝から俺の女と楽しそうに話してるじゃねえか」
信也はニヤついた笑顔を浮かばせながら言うと、カバンを叩きつけるように机の上へと置き、白石の隣に座る。
この根本信也、実は白石の彼氏であった。
そして、僕の小学校時代からの親友でもある。
太眉、筋肉質、ガサツ。
豪放磊落としか言えない信也は、清楚な佇まいの白石からすれば、反物質のような存在の男であった。
一体、白石は信也のドコに心惹かれたのか。
それは白石のみぞ知る話なのだが、白石本人の弁によると、白石は信也の「真っ直ぐなトコロ」に惹かれた、という事だ。
確かに、大学に入って早々と白石に惚れ込んだ信也は、三顧の礼とばかりに何度もアタックしたり、土下座をして交際を願ったりしたのだが、それが「真っ直ぐ」と捉えられるのは僕には甚だ疑問だ。
が、白石が信也に心惹かれたのは事実であり、その事実があるが故、僕をはじめ「ぼっち」の男子学生は白石に手が出せないでいた。
「白石が声を掛けてきたから、返事をしただけだよ。
俺から話し掛けた訳じゃない」
嫉妬心が見え隠れする信也の言葉に、僕はややムキになって反論する。
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