ある日のヒトコマ01

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ある日のヒトコマ01

俺は海外から日本へ向かうために飛行機に乗った。緊急でない限り自家用ジェットは使用しないというのが我が家の決まりなので一般の飛行機に乗っている。 その日はたまたま窓際の席だったのでボーッと窓の外を見ていたが何気なく機内へ視線を游がすと通路を挟んだ向こう側の席に何となく見たことあるような顔が座っていた。その程度の認識だった。 その後は普通にフライトを終えて無事に日本へ到着。 そして、普通に空港を出て父の会社である本社に顔を出し、海斗に会う予定だった。 困ったように空港のロビーを歩く先程の見たことあるような顔が不安げな顔で彷徨(うろつ)いていたので、いつもならこんなことしないが、何の因果か俺は声を掛けてしまった。 「おい、何か困ってるのか?」と。どこのナンパ野郎だよ!と内心で突っ込んでしまったのは仕方ないだろう。 泣きそうな顔でこちらを見て状況を説明し始めた。 おいおいおい、マジかお前、、、少しは警戒心を持てよ、、、すんなり話すんだなと諦めにも似た気持ちを抱きながら話を聞いたー・・・ 内容をまとめると、父方の祖父母とご先祖様のお墓参りに来たが、独り旅は初めてらしくテンパってパニックになりそうだったとのこと、、、 1年に最低でも1回は父と共に日本へ墓参りに来ていたが、どうしても外せない会社の都合で今回、初めての独り旅だったらしい。 自分で蒔いた種なので刈り取るのも自分だ。という事で、行きたい場所を聞き出して最寄り駅やら交通手段などを事細かくメモに記載して渡してやると涙を浮かべて何度もお礼を言われた。 「スマホの機能を使えば良いだろ」と言ったが、それに対しての応えは「電話とメールまたはLINE以外使用してない」とのこと。何でも機械類に弱いらしい、、、今のご時世でそれはヤバいだろと思ったが口には出さなかった。 念のため、機能の使い方も教えた。メモにも書いた。イラスト付きで。絵心は微妙だが、、、まぁ、よしとしよう。 別に大したことではないし、全く構わないのだが「何かお礼を」と言い始めて詰め寄ってきたので「気にしなくて良い。声を掛けたのが俺で良かったな。悪い人なら事件に巻き込まれていたかもしれないぞもっと警戒心を持て」と言って然り気無く近づいて来ていた身体を離してやる。 「気をつけて行ってこい。困ったらコレに連絡しろ。気が向いたら助けてやるから」と言って俺の名刺を渡した。すると、さらに目をうるうるさせ深々と頭を下げた。 顔を上げてはにかんでお礼を言ったその人は 多分、きっとあの時の少女ー・・・ *
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