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金属を激しくぶつけた様な甲高い音が響いた。 胸元を庇うように、 咄嗟に滑り込ませた左腕には鬼血の手甲【シールドモード】が展開されていた。
しかし、 勢いよく振り抜かれた牙の勢いは止まらずに、 手甲の表面を滑るとワイルドキルボアの牙は、 俺の肩を抉り取ると深い傷を刻んでいた。 衝撃により俺の体は弾かれると宙を舞っていた。
吹き飛ばされた勢いで、 ダンジョンの壁へと背中を打ちつけると、 そのまま無防備な体勢で地面へと落下してしまう。 ぶつかった衝撃により肺から空気が一気に抜けていくのだった……
途端に呼吸もままならない程の苦しみが押し寄せてくる。
「がはぁっ!? ぐうぅぅ…… 」
接近戦の経験がほとんどなかった俺は、 LV9のワイルドキルボアにさえも追い込まれてしまう。 顔面蒼白の状態の中で、直ぐに状態を立て直した俺は、 ワイルドキルボアへと再び両手のナイフを無我夢中で構えていた。
呼吸は思うようにできず、肩に走る激しい痛みは俺の戦意を急激に削っていく……
「ぐッ…… まだ負けるか…… よ…… 」
ワイルドキルボアは威嚇するように、 地面を蹄で何度も削っていた。 血走った赤い瞳でトドメを刺そうと言わんばかりに、 睨みつけくるのだった。
身動きが取れなかった。 少しでも動けばワイルドキルボアの強力な突進が、 俺へと迫ってくるだろう……
鬼魂の効力があるうちにワイルドキルボアを倒せなければ、 俺にはまず勝ち目は皆無だろう。
そう判断を下した俺は、 意を決して動き始めていた…… 俺の動きに合わせるように、 ワイルドキルボアは勢い良く俺へと突進を開始する、 壁伝いに走る俺を捉えようと猛烈なスピードで俺の直近まで迫ってくる。
ワイルドキルボアの目の前で咄嗟に急ブレーキをかけ、踏み止まった。俺の動きに合わせていたワイルドキルボアは、 突然のフェイントに釣られると体勢をガクリッと一瞬崩してしまうのだった。
その隙を俺は逃さなかった。 左手のファイターナイフを力一杯振り抜いていくと、 ワイルドキルボアの首元へと突き刺していた。
刃先は肉を切り裂き深々と刃先を沈めると、 俺は確かな手応えを感じた。
ワイルドキルボア LV9 HP93/270
ダンジョン内にワイルドキルボアの悲鳴が響き反響していた。 俺は深々と突き刺さったファイターナイフを手放なし、 暴れるワイルドキルボアへとすぐに、 右手のブラッドナイフでトドメの一撃を突き立てていた。
痛みで我を忘れ暴れ回っていたワイルドキルボアには、 ブラッドナイフの攻撃を避ける事などできるはずもなかった。 血を撒き散らしながらそのまま地面へと崩れ落ちていくのだった……
ワイルドキルボア LV9 HP0/270
ワイルドキルボアLV9を倒しました。
レベルが上がりました。
「ハァハァ…… なんとか勝ったぞ…… 」
その場に座り込んだ俺は、 暫く動く事が出来ずにいた。 張り詰めていた緊張感が解けると急激に疲れや痛みが押し寄せてきたのだ。
肩の傷がこれ以上悪化しないように、 ポーション(小)を使用していくと大きな深呼吸をして、 肺へと空気を送り込んだのだった。
※ポーションは最大HPの20%を回復してくれる秘薬だ。
暫く休憩した俺は、ワイルドキルボアを自動解体で光に変えていた。 光は粒子となり左手へと吸い込まれるように、 空間ボックスに収納されていく。
今回の苦戦は明らかに俺の近接戦闘に対する経験不足により招いた結果だ……不甲斐ない。
これからは近接戦闘もこなせる様にしなければ、 この先幾度と無く命を落とす事になるだろう……
ダンジョン内でモンスターとの戦闘をこなしていく程に、乗り越えなければならない問題が増えていくのだった。
俺の思いや経験を少しでも、 多くの人へと伝えなければならないだろう……
これはきっとダンジョンを発見してしまった俺の責任であり使命なんだと思う。
募る思いを胸に、 俺はダンジョンの奥へと進んで行くのだった。
※ ダンジョンの奥へと進んだ蓮志の背中は、 少し大きく見えたかもしれませんね。 蓮志は基本的に近接戦闘を苦手としています。 今まで武術の経験がない蓮志にとって、 あまりモンスターに近づく勇気はないでしょう。
さて、 そろそろSPとJPを使用する時が来そうな予感がします謎
DP使用はもう少し後のお楽しみです、 ダンジョンクリエイト。 命までクリエイトしちゃったり?
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