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「鱈齢場韮子はある日言ったのじゃ、
弟なんて認め無い。
あんたが弟じゃなく妹だったら良かったのに…と」
「………!!」
老婆の説明に、
これまで点でしかなかった幾つもの情報は線となり、
僕の頭の中で完全に繋がった!!
ぼやけていた僕の頭に電光が瞬いた!!
「ああ、そうか!
十句くんは女の子に成りたかったんだ!!」
いや、正確には女の子に成りたかったのかは謎だ。
そんな事を迂闊に言った日にはLGBTの方々に袋叩きにされてしまう。
兎も角、
姉の言葉を受けて十句くんは
女の子に成ろうとした。
トートバッグを肩に提げ、
中には盗み出した姉のお下がりを入れて、
姉の声を録音したレコーダーを延々と再生し、
ヘッドフォンで聞きながら
トイレの個室で女装行為に及んでいたのだ!!
「何てこったい!!」
飛んでもねぇ変態ではないか!
いや、真実を知った今となっては俄然萌えるが。
「親兄弟から忌み嫌われ、迫害を受けて来た醜いアヒルの子供はカルガモじゃった」
老婆は有名なお伽噺の顛末を述べる。
歪に形成された鱈齢場家と照らし合わせたつもりカモ知れないが
いやいや、ちっとも上手くない。
って言うかアヒルとカモは同類だし。
老婆はヒヨコ売りに飽きたのか、
はたまた元からそのつもりであったのか、
段ボールをひっくり返して雛達を追い払ってしまった。
何処からともなく母鳥がやって来て、雛を引き連れて水田を泳いで夜闇に消えてしまった。
「ふむ、
十句くんは姉に恋い焦がれておったんじゃな。
まぁ何じゃ、お主にとっては美味しい話しじゃろう鴨が葱背負って来たのじゃから。
後は美味しく料理して食べたんじゃろ?
えっ?
こ~の鍋奉行めがっ」
老婆は僕の肘を小突いて茶化す。
「いえお婆さん、
鍋奉行などとは恐れ多いよ
僕は反対に利用されていたに過ぎません…
何故なら十句くんに
出汁を盗られ、すっかり骨抜きですから」
おしまい。
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