大人日傘

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 凛子は中学校に日傘を差して登校してくる。嫌われそうな気もするけど、クラスでは和気あいあいと受け入れられていた。  俺と凛子は時間さえ合えば登下校はいつも一緒。小学校からずっと変わらない。凛子は忘れ物ばかりで、毎朝俺が確認しなくちゃいけなかった。その上、凛子の部屋に取りに戻るのは俺の役目。凛子が探すより、俺が探した方が早いから。  一人っ子の凛子は両親どころか、初孫だからと余計にじぃじとばぁばにも甘やかされていた。中学生にもなってその呼び方はやめろって注意しても、じぃじとばぁばの方が寂しがるからって絶対やめなかった。  ケンカとは言えない言い合いのあとは、日傘が重いって駄々をこねる凛子。それでも持ってはあげない。これ以上は甘やかさないって決めていた。それが凛子のためだと言い聞かせていた。  すると、凛子は耳に手のひらで蓋をして聞こえないってむくれる。喉が渇いたって、自販機の前を通り過ぎる度にせがんでくる。可愛い子ぶって上目使いをしてみたり、ただの自販機を当たり付きだって嘘をついたり、騙されてもないのに、引っ掛かったとおちょくってきたり。呆れるほど子供じみた嫌がらせを続ける。俺が面倒くさそうにするほど、凛子は嬉しがっていた。  結局ジュースを買ってあげなくても、学校に着く頃には機嫌は直ってる。寄り道ばかりで、大抵遅刻ぎりぎり。時間がないからって不器用な凛子から日傘を奪って、畳んであげると勝った勝ったと跳び跳ねる。  ガキだとけなしても、まぁなって胸を張る。そんな凛子には、近頃あえて視線をそらさなければならなかった。どうしたって胸に目がいってしまうから。それに気づいた凛子は、嬉しそうな顔をして、わざと肩がこるって言い始める。俺は気づかないふりして、靴を脱ぐ。  二人の下駄箱は一番上。揃って靴をしまうと視線が重なる。凛子がもうちょっとだねって言って、背比べ。凛子の身長を抜かした時に、俺は告白しようと決めていた。
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