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夏の日差しが照りつける平日朝9時。
玩具メーカー(株)トイ・プードル。
本社ビル3階。
「おい、佐倉! リトルチャイルドからクレームが入ってる。在庫商品が死ぬほど届いたって」
「わ―――っ、すみませんっ‼ …え、どうしよう?」
佐倉ここ。トイ・プードル勤務3年目。
営業3課のホープ。…になる日は遠い。
「バカっ、すぐ現地行って他の店舗にさばくぞ」
鬼の高野こと高野チーフが書類で私の頭をバシバシはたいて、小気味よい音がフロアに響く。
「また、佐倉さん」
「懲りないね」
「でも、かなり、…」
「「いいよね~~~っっ」」
いやいや皆さん。
これ、普通に痛いから。痛いからね!
恨みがましくチーフを見上げると、
「…いい度胸だ。言い訳は車で聞く」
チーフはなんだか少し楽しそうに口の端を上げ、その長い腕で私の頭をヘッドロックして、
「ギブですっ、ギブ―――っ‼」
容赦なくフロアを引きずって駐車場まで私を連行した。
「高野さん、めっちゃ笑ってた!」
「なんか、ものすごく」
「「癒される~~~っっ」」
私の頭が多少変形しようと、3階フロアは今日も華やいでいます。
そして。
「…あいつ、なんであんなにバカなのかな」
「…同類相憐れむですね、秀人さん」
「…ん?」
「あーあ、高野さん、めっちゃめちゃ幸せそう」
営業3課は今日も元気です。
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