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燃え上がる街を走った。
吹き上げる炎に赤黒く染まる空は、巨大生物の体内にいるような何とも異様な雰囲気。
自分はどうなってしまうのか。
そんな恐怖と絶望に押し潰されそうになる。
この光景は忘れることが出来ない━━━
その色は私の心に強烈なトラウマを刷り込んだ。
必死の形相で逃げ惑う人々は、ただ自分の命を守るために他人を押し退け走る。
誰かに突き飛ばされて転んだ。
本物だ。
本物の“命の危機”に晒されているんだ…
背中に括り着けた、日給の入った袋の紐を握り締めた。
お金を持って、おばあさんを連れて逃げなくては!
崩れ落ちて行く手を塞ぐ家々を迂回しながら道を急いだ。
血の空に旋回する爆撃機の翼が浮かび上がる。
そこから、卵を産み落とす魚のようにぼろぼろと爆弾が撒き散らされた。
街のあちこちで新たな爆発が起こり火の手があがる。
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