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 プロフィールカードはこうだ。  名前:小川景子  ニックネーム:景子ちゃん  年齢:29歳  血液型:O  職業:コンビニのアルバイト  学歴:短大卒  趣味:料理(料理教室に通いはじめました。焼肉が得意です)  住所:実家暮らし  家族構成:祖父母父母妹  ペット:ハムスター  休み:不定期  休日の過ごし方:食べ歩き  相手の条件:優しくて背の高い方  一言:初めて参加します。口下手ですが仲良くしてください。気軽に景子ちゃんと呼んでくれると嬉しいです(^^)v 「いくらなんでもこれはないよ……。あの女優さんと一文字違いだなんてネタしろって言ってるようなものじゃん」  他にも突っ込みどころ満載だけど、名前だけは我慢できない。  しかし愛美は不満そうに唇を尖らせる。 「なにその言い方、こっちも一生懸命考えたんだよ」 「そうだけどさぁ」  サクラである私が目立たないようにするためだと言い、愛美はとことんまで貶める。  底意地の悪さは昔からちっとも変わらない。高校時代だってさも親友のように私を連れまわして自分の引き立て役にしていたのだ。  ただ私も一方ではそれを利用していた面もある。中学のような壮絶ないじめを受けるのはどうしても避けたかった。  利用し、利用される。  暗黙の了解の上で。  そんな腐れ縁でここまで続いている。 「まさかと思うけど、サクラのふりして良さそうな相手を物色しているの? そんなわけないよね。その顔で」  愛美は仕上げとばかりにチークを差して、化粧ポーチをしまう。  新色の桜色のチークは若々しい愛美の顔によく似合う。髪だって最近染め直したばかりで艶々だ。 (ほんとうは参加者のだれよりも男目当てのくせに)  偽物の指輪は単なる免罪符なのだ。既婚者だと知っていてアプローチしてきた相手が悪いと言うための。 「景子さ、これまで第一印象カードで男の人から○もらったことある? ないでしょう」  最初の自己紹介タイムが終わったあとに「もう一度話したい」と思う相手の番号に丸をつける。それが第一印象カードだ。愛美が回収して異性とマッチングしていれば教えてくれる。  私は社交辞令も兼ねて全員に丸をしている。  こんなブスでも、ひとりでも好意を持ってくれた相手がいるということが自信……しいてはリピーターになる可能性につながるから。  けれど私は。 「……いままではなかったよ。でも、万が一ってことがあるかも知れないじゃん」 「ないない。ありえない」  愛美は前髪を撫でながら声のトーンをひとつ上げた。 「だから景子をサクラで呼んでるんじゃん。分からないかなー」  そんなこと、分かってるよ。  ぎゅっと唇を噛んだ。  私は鏡を見るのも恥ずかしくなるくらいのブスだ。  誰からも選ばれないからサクラとして重宝されているのだ。  「女性の一人」ではなく、獣とおなじ「頭数」として。
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