秘密のクリスマスチキン

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【なにすんだっ】 「まぁ、落ち着けって。そろそろ焼けたかな」  カウンターにハリーを乗せ、ヒロはオーブンを覗く。 「よし、ちょっと待てよ」  ヒロはオーブンを開け、何かを取り出した。 (なんだ、なんだ?) 「メリークリスマス」  そわそわするハリーの目の前に差し出されたのは、生クリームが添えられた小さなチョコケーキだ。  そこへヒロはパラパラと粉砂糖を降った。 「粉雪舞うクリスマスのフォンダンショコラ、どうかな?」 (至高……!)  ハリーは我慢ならないとばかりに、スプーンを振り下ろした。 「熱いから気をつけろよ」  ヒロはがっつくハリーを見て笑っている。  しっとりチョコケーキの中からとろりとチョコソースが溶け出す。ショコラの甘い香りを余すことなく吸い込み、ハリーは幸せ気分に包まれた。 【甘さとほろ苦さが絶妙、濃厚でいて優しい味だ】  ハリーは舌の上で存分にチョコを味わっている。 「お褒めにあずかり光栄です」  自分以上に嬉しそうな顔をするヒロを見上げ、ハリーは言った。 【桜田にもちゃんとプレゼント用意してるんだろうな?】  思いがけない切り返しに、ヒロは少しばかり顔を赤らめる。 「まぁ、それは……、ハリーには秘密」 【はいはい、そうですか】  ハリーは、どうでもいいけどな、と適当に返事をした。  美味しいフォンダンショコラに満たされ気持ちよくなったハリーは、そのあと深い眠りに誘われる。というわけで、その夜、ヒロがどんなクリスマスを過ごしたのかは知らずじまいだった。
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