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「う、うう……」
私の家の裏にある小さな丘に、一棟の東屋がぽつりと建っている。ほとんど人が寄り付かず、一人になるには絶好の場所だ。夏大で負けた翌日、一緒に帰っていた玲雄と別れた私は、そこで涙を流していた。
「くっそお……、くっそお……」
もうかれこれ三〇分以上が経つ。いい加減抑えようと何度何度も唾を呑み込んでいるが、沸き上がる衝動は収まる気配が無い。こんなにも泣いたのは、間違いなく人生で初めてだ。
優勝できなかった。主将としても選手としても力の足りなかったことが情けなく、ただただ悔しい……。
けれども入部した当時を振り返ってみれば、試合に負けることに対して自分がこんなにも感情を揺さぶられるようになるなんて考えられなかった。何故なら私は、チームの勝敗などどうでも良いと思っていたのだから。けれどもそんな私を変えてくれたのが、木場監督だった――。
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