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東の空で雷光が二度三度と瞬いた。
かつて太宰府に左遷され憤死した貴族が怨霊となり、雷を内裏に落としたと聞く。
――いや、此度も落ちた。
この雷も、わが身に憑りついた怨霊の仕業に違いない。
雷光に照らされた義守の姿が見えた。
木偶の棒と化した屍どもを打ち払いながら岩場を登ってくる。
空に幾筋もの軌跡を描いて矢が飛んできた。
駆けつけてきた武士どもが放ったのだろう。
そのうち二、三本の矢が音をたて、力岩の三間ほど手前に落ちた。
後方の気配に目をやると、瑠子が立ち上がっていた。
雷光に続いて雷音が響き渡った。近くに落ちたようだった。
瑠子の様子に変化が見えた。
倒れたわしに歩み寄り、見下ろしてきた。
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