第九十九話  『雷光』

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――が、しかし、奴らの思惑どころか、わしの思惑も狂った。 突然現れた若い男に邪魔をされ、一人を残し山賊どもは倒された。 わしの呪で葬ってやろうと思った。 が、人間離れした腕前と力に興味を持った。 何より、名のある陰陽師が出張ってこぬことに退屈を覚えていた。 中宮の袿の袖に忍ばせた式札の報告で、その若い男が翌朝、山賊の棲家を覗く腹つもりだと知って一計を案じた。 男の言動から、すでに山賊どもの住処を掴んでいるのだろうと推測した。 ならば、利用できるのではないかと。 そうだ――とうに、わしは狂っていたのだ。 わずかに残っていた力を振り絞り、中宮と瑠子を宙に浮かべ、力岩の上に導く。
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