第九十九話  『雷光』

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長きにわたり生気を失っていた、その目が揺らいでいた。 何かを思い出そうとするかのように、惑うように泳いだ。 断末魔のような鴉の鳴き声があたりに響き渡る。 目をやると、中宮と瑠子のいた檜の枝の上に双頭の鴉の姿があった。 瑠子の瞳に小さく灯がともった。 ――思い出させるわけにはいかなかった。 残る力を振り絞り、半身を起こし、震える腕で、わしの前に立った瑠子に手を伸ばした。 力岩の下に突き落とそうとした。 瑠子の衣の裾を掴んだその腕が震えている。 が、瑠子は、わしの怯えに気づくふうもなく、しゃがみ込み、袖の中から何かを取り出した。 差し出された手のひらには笹に包まれた餅が載っていた。
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