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涙の雨 2
彼は俺がバス停から見ていたのは知らないようで、初対面の人に泣き顔を見られたことを恥ずかしそうにしていた。
彼はいつも明るい朝日を浴び、隣を歩く同い年位の青年と朗らかに笑いあっていた。ずっと伏目がちに笑う所もいいなと思っていた。明るい栗色の髪に朝日があたり天使の輪が出来るのも印象的だった。
その雰囲気がいいなと目に留まったのが最初だ。その後、残業した帰り道に、公園で二人が軽くキスを交わしているのを目撃してしまい、その青年が彼氏だと知り、がっかりした。
それでも彼氏を信頼し、優しく浮かべる笑みが可愛いと……俺も次に恋をするなら、あんな風に優しい笑顔を浴びてみたいと憧れていた。
だから……こんな酷い泣き顔は、幸せそうだった君に似合わないよ。
「これを君にあげるよ」
そっと彼の手に、俺と芽生で見つけた四葉のクローバーを載せてあげた。
「……四つ葉? あっ……すみません……見ず知らずの人の前で、泣くなんて」
彼にシロツメグサの花言葉と『幸せに暮らすことが最大の復讐である』という外国の諺を教えて励ましてあげると、そのまま黙りこくってしまった。
「……」
まずいな。初対面なのに、いきなり過ぎたか。こんなおっさんが突然話しかけてきたら、普通引くよな。俺はまだ32歳なのに老けて見えると幼稚園のママさん達によく言われていたのだ。怖がらせるつもりはなかった。
それにしてもこんなにも悲しげに辛そうに泣くってことは、まさか……あの隣を歩いていた彼と別れてしまったのだろうか。
この青年を密かに好いていた俺には朗報だが、人の不幸を喜ぶ趣味はない。
「もしかして……あなたにも何か悩みがあるんですか」
おっと……参ったな。初対面の俺を警戒するでもなく気遣ってくれるとは驚いた。
自分が辛い状態なのに、俺まで気遣うなんて……お人好しで優しいんだな。
それに初めて彼の近くに寄ると、ふわっと花のようないい匂いがした。これは惹きつけられる。
「んーでも俺のは……いきなり初対面の人に話す内容じゃないからね。それより今日は……君は君自身を大事にしてあげるといいよ」
「うっ……」
彼の眼から……ポツポツと雨上がりの雫のように、涙が再び静かに降り出してしまった。
「どうやら君は今日とても辛いことがあったようだね。でもね、雨の日も雲の上にはいつも綺麗な青空が広がってることを知っている? それと同じだ。そのことを忘れなければ何があっても大丈夫。 だから元気を出して」
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リンク部分……『幸せな復讐』の「ふたつの指輪」「シロツメグサの魔法」
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