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プラス4℃のぬくもり
ひんやりとした何かが落ちてきて、頬に触れると水のような何かがあった。どうやら私の上に乗った男の汗がポタリと顔に落ちて来たようだ。冷たい……。
不機嫌な顔を隠そうとせずに目の前の男を見る。けれど、男はそんな私の態度には気付かずに、ただひたすらに腰を振り続けていた。短く吐いた息とともにゴム越しに私の中へと精が吐き出されたのを感じ、まあいいか。と、もう一度目を閉じた。
吐き出された精の熱さが心地いい。熱を帯びた男の身体から感じる体温が気持ちいい。この瞬間だけは、私も人並みの体温になったような気がする。
「冷たいな」
「知ってる」
しばらくして、男が私の上から身体をどけた。あれだけ火照っていた身体も、今ではもうひんやりとしたいつもの冷たい身体へと戻っていた。
セックスが好きなわけではない。
ただ、人よりも低い体温の私には、不安があった。誰かの熱を分けてもらわないと、眠ったまま冷たい身体がさらに冷たくなって、誰にも気付かれず逝ってしまうんじゃないかと。だから私は毎夜、男に抱かれる。好きでもない男たちに。でも、それでよかった。生きていることが実感できるから。
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