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壁にぶら下げられたイルミネーションが青、緑、紫と順番に点滅して、最後には睨むように全ての光が同時にこちらに向けられる。その下に置かれた紙のランプシェードには達筆な文字で『占』と書かれていた。光に強引に連れて来られた場所は、どうやら占い屋らしかった。
「なんだここは」
「占い屋だよ」
「見ればわかるわ。なんでここだよ」
すると、光は自信満々にランプシェードの隣にある小さなテーブルを指さす。その上に乗ったブラックボードには、蛍光緑で『夢占いもやってます』と書かれていた。
「じゃじゃーん! どう?」
「どうって……絶対、胡散臭いだろ」
中に入ったらいかにも占い師らしいレースの頭巾を被ったおばさんが待ち構えていて、あることないこと吹き込まれるに違いない。
「こんなの金と時間の無駄だ。行くぞ」
踵を返すと、でもさ、と声がかかる。
「気になってるんでしょ?」
つい、足が止まる。すると、光は俺の周りをゆっくりと回り出した。
「一人でぐじぐじ悩んでるよりも、後腐れない他人にしゃべっちゃってなにかしら回答もらった方が楽になるんじゃない?」
鋭いこと言いやがって。キッと睨むと、ニヤリと笑って返される。そして、俺を占い屋の方へ強引に振り向かせると、迷ってる暇があったらGO!という掛け声と共に店内に突き飛ばした。
「じゃあ、下の待ち合いで待ってるから」
「お前も一緒に来ないのかよ!」
「俺がいると話しづらいんでしょ?」
そう言うと、光はひらひらと手を振ってどこかに行ってしまった。変なところで気を利かせやがって。心の中で毒づきながらも、仕方なく奥の間に進む。
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