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ザックの聖剣は、神気を濃く放つ純黒の片刃剣だった。良く見なくても解る聖なる気を纏うそれは…間違いなく普通の只人が触れたら、身体が焼かれてしまうほど強い浄化作用があるのが解る。
「……コレ神器ではないのですか?」
つい金色の美青年二人を見つめ尋ねてみれば、二人はそれはそれは美しい満足感溢れる笑みを浮かべたの。
「神器になる予定の聖剣だな。」
なんだろう……ザックがチート化してくわ。私は苦笑いを浮かべて頷くに留めたの。
「終わったか?」
アシュヴィンの双神に召喚魔法陣の場所まで送って貰い別れ大きな扉を潜ると、神龍さんが胡座をかいて出迎えてくれた。
「おう!思ったより楽しかった!」
……ザックは上機嫌。……単純だわ……。
「だろ。嬢ちゃんは?」
「はい。なんとか。」
「じゃあ戻るか。俺が夢魔の領域まで戻してやる。」
「よろしくお願いします。」
神龍様と一緒に、巨大樹の神殿入り口まで戻り、受付の方に結晶石を返し私達は、夢魔の領域に戻った。
戻った夢魔の領域は、いつの間にか大平原にペンションがポツリと立つ場所に変わっていて、ユーリさん達はペンションの前にカフェテーブルを置いてまったりとしていたの。
「あ〜。お帰り〜無事聖剣手にしたね。」
ニコニコと私そっくりな顔で笑うユーリさんに私は手を振り、ザックの背中から飛び降りた。
「戻りました。はい。無事に。」
「よかった。じゃあ、少し休んでマリーアンナの魔力を変換しよう。さぁ座って。」
「はい。」
ユーリさんに勧められるまま椅子に座り、グルリと周りを見渡す。長閑な平原。暖かな陽の光。全てが夢の世界のモノとは思えないほど美しい。
「今はさ、僕が大好きな場所を模写してるんだ。夢魔の領域とは夢の世界。本人の望むように変えれる。僕らにとっては精神世界。だから精神修行に使用したりもする。君らとは少し概念が違うよね。」
「だけど唯一繋がり合う世界。それを知っていればな。」
「そうだね。まぁ…基本的に皆そんな事知らないししない。次元が歪む危険があるし。」
「色々あるのですね。」
「あるのですよ。いつか君が天に還る頃、君も知るだろう。今は、必要ない事でもある。」
「あら??ザック達は?」
「あぁ。神龍が鍛えたるわ!!って咥えて連れてってたから神龍の神殿に行ったんだろ?」
「なるほど。現実世界に帰る時は一緒に帰れるかしら?」
「あぁ。それは保障しよう。」
寡黙な美麗なジンさんは、たまに会話に参加する。ふっと和らぐ目元は、ユーリさんに対しての愛情が滲んでる気がした。
「さて、始めよう。」
ーパチンー
ユーリさんが指を鳴らすと、神柱道を開いた場所に、瞬きをする間で変わった。
使用した魔法陣は、まだ床に書き出されたままで、その中央に膝をつき、胸元で手を組み祈り語を呟いてるアンナさんが居たの。
「準備出来たみたいだ。さぁ、マリアンヌ。アンナと向かい合わせに同じ姿勢を。」
「はい。」
静かにアンナさんに近付き、私も同じ姿勢を取る。
「じゃあ、アンナよろしくね。僕達は少し予定が出来た。」
「えぇ。後は任せて。」
「マリアンヌ。またね。」
「はい。御機嫌よう。」
ヒラヒラと手を振り、ユーリさんとジンさんは消えたの。
「では、始めましょう。」
硬く呟いたアンナさんに頷き返す。アンナさんは歌う様に長い詠唱を始め、それに答える様に魔法陣は淡い紫色の光を放ち、私達を包み込む。
《御母様…わたくしはもう大丈夫です。だからご自身の為に生きてください。》
強く強く願うと、ふわりと頭を撫でられた気がした。
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