雨宿りびより

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●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 私は彼が気になっていた。 葉吉鈴太郎さん、歳は35歳らしい。私の上司だ。 とにかく仕事ができる人で、大量の仕事もすごいスビードで淡々とこなす。涼しい顔でさらりと終わらせるのだ。 冷静沈着、という言葉がぴったりで、急ぎの案件が入ろうとも、トラブルが起ころうとも、常に落ち着いて適切な対応をとっていた。 商品企画部にはマネージャーもいるが、実際の指揮やメンバー達の管理はチームリーダーの葉吉さんの仕事だった。 穏やかな人柄だが、厳しく言う時は言う。言葉を荒らげることなく、静かに諭してくるのだ。それは相手を思ってのことなのがよくわかる。皆が信頼してついていける上司だった。 でも、業務以外ではあまり皆と関わることがなく一人でいることが多かった。 ランチも一人みたいだったし、マネージャーの泉さんやチームの社員さん、隣の食品チームのリーダーの真中さんから話しかけられることはよくあるようだったけれど、自分からは積極的に皆と関わろうとしていなかった。 皆が集まってわいわいしている時も、自分の席から仕事をしながらそれを見つめている様子だった。 そう言う私も、皆の輪に入るというよりはその輪の近くで見ている感じだったから、そういう時はなんとなく、後ろにいる葉吉さんが気になった。
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