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「じゃあ、まずは私からね」
そう言うと彼女はまたしても顎に人差し指を当てて考え込む。このポーズは彼女がなにかを考えたり悩んだりした時の癖なのだが、昔はこんな仕草にもいちいちキュンとしていたのをなんとなく思い出していた。
「まずは、優柔不断なところとか」
しばらくして、彼女が絞り出したのはそんな答えだった。
「いや、そこは慎重って言ってくれないか?」
「ちょっとくらいなら慎重でもいいかもしれないけどさ。あなたのはちょっと行き過ぎ。前にファミレス行った時も、メニュー決めるのにどれだけ時間使ってるのよ」
随分昔の話を持ち出されたと思ったけれど、事実は事実だ。あとで友人にそのことを話したら「いや、お前1時間はさすがにヤバイって」と心底引かれてしまったから、おそらくあの時おかしかったのは俺の方なんだろう。
「まあ…。それは自分でもあまり良くないとは思うけどさ」
「はい、じゃああなたのターンね」
「は?もう終わりなのかよ?」
そこから徹底攻撃されるかと思って内心身構えていた俺は自分でも驚くような素っ頓狂な声を出してしまった。
が、彼女はお澄まし顔でクスッと笑ってみせた。
「別に直してほしいとかじゃないしね。とにかく今はお互いの嫌なところを言い合うの」
不毛にもほどがある。と思ったけれど、まあ攻撃されないのならそれに越したことはない。それに、ここで本当に喧嘩したところで後味が悪いことこの上ない。彼女もそれは分かっていたのだろう。
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