プロローグ

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プロローグ

この町は森に囲まれている。 多少交通の便がいいだけで何も無いところだ。両親にはとても愛されてとても幸せな人生だと思う。…ぼくはこの町が好きだ。家の前の通りを左にまっすぐ行くと、森に入る。そこを少し入ると川が流れていて、古い橋があって。川と一緒に眺めるのが僕の日課だった。だが、八ヶ月前母とお散歩でここに来ている間にお留守番をしていた父が、その日からどこかに行ってしまった。 「少しでてくるよ」 という置き手紙を残して。 その二ヶ月後。母は父を探して僕を置いて家を出て行った。父が出て行った後、一ヶ月間母は何もできなかった。ぼーっとしたままご飯も食べず、食べれても後から吐いてしまったりしていた。日々苦しみ続ける母を見るのは僕にとっても苦痛だった。それから僕は一人では何もできず、近所の人にご飯をもらったり自炊を教えてもらったりして、食いつなぎ、半年が経った。この半年で、家にあるお金を全てかき集めた。 このお金を持って僕は、今から当てもない両親を探す旅に出る。 これはそんな僕のお話。
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