No.30 プロポーズ

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No.30 プロポーズ

1 ――――三十になっても結婚できなかったら…… ――――俺が貰ってやってもいいぞ。  いかにも結婚式の招待状……といった封書が届いたのは昨日。そして今朝会社に来てみれば、同期の鈴木さんも寿退社するらしい。そんな噂まで聞こえてきた。  もしかしてもう六月に入ったのか? 結婚と言えばジューンブライドだろう。だがまだ四月だ。  近くの蕎麦屋で昼食を済ませ、近くのカフェへ同僚の菜々子と一緒に入る。  それなりに混雑している中、四人掛けに二人で座るのは忍びなかった。だがそこしか座るところがないのだから致し方ない。  動けば少し暑いと感じる午後。アイスカフェオレを片手に、菜々子と向かい合わせに座った。 「智子から結婚式の招待状、届いた?」  菜々子がカップに口をつけながら頷く。 「いかにもって感じだよね。封筒には白い花がプリントされていたし。一体何の花なんだか」 「プルメリアじゃない?」  菜々子にそう言われてもピンとこなかった。  聞き覚えはあるんだけど……  私の表情を見て理解したのか、 「ハワイでレイに使われている花よ」 「ああ」  と言いつつ、分かるようで分からない。
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