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誰もが、あいつを一目見るなり「なんて美しい人なんだろう」と口にする。
でも実際、あいつはとんでもない美人だ。
雪のように白い肌は艶々と輝き、彫刻家が命を懸けて創造したかのような麗しい容貌は、誰より高貴で美しい。
けぶるように長い睫は瞬きの度にパサパサと音がしそうだし、ほんのりと色付いた頬やサクランボ色の唇はぽってりとしていて、無条件に吸い付きたくなる。
あいつと恋人になりたい、友人になりたい、何でもいいからとにかく繋がりを持ちたい。
どんなに他愛なくても――――せめて、挨拶だけでも交わすような仲でも構わないから……知り合いになりたい。
誰もが皆、そう願っている。
それが本当に、ムカつく!
腹が立つ!!
オレは、あらん限りの敵意を以って、18も年下のあいつを睨み付ける。
(ガキのクセに、生意気なんだよ! )
そんな意思を込めて。
しかしあいつも、視線だけで射殺すような勢いで、オレをいつも負けじと睨み返してくる。
オレたちは、仇敵のような間柄だ。
そもそも、あいつとはどういった経緯で出会ったのか? どういう繋がりなのか?
これは、説明すると長くなる。
何故なら、あいつとは、親同士の因縁から始まるからだ。
オレの親父は九条凛という名で、アルファの中でもトップクラスの名家の家系にあたる、由緒正しい家柄のアルファだ。
母親も同じく名家出身のオメガの女で、二人は家同士の吊り合いで選ばれ、そして結ばれたらしい。
――――残念ながら、母はオレがまだ幼い頃に亡くなってしまったが――――。
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