あなたになりたかった

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半分程お弁当を食べて、水菜は不意に聞く。 「倉田さんの胸はどうでした?やっぱりふわふわな感じ?」 「そうだな…俺の手にも収まらない程の大きさで弾力があるな。」 お弁当を食べながら、真は無意識に返事をした。 「へぇ…。それで驚いて停止したわけね?それを彼女は女性慣れしていないと思ったわけだ…。よかったねぇ?セクハラなのに訴えられなくて…。」 真の方を見ずにお弁当を食べながら水菜は言う。 「あれは事故!アクシデント!故意じゃないぞ?ホントだぞ!」 慌てて、水菜の方を向いて言う。 「はいはい…。事故ね?事故でも触れてラッキーでしょ?おっきいもんねぇ? なんか少し腹が立って来た。」 真とは逆の方に身体を向けて、水菜はお弁当を食べ始めた。 「水菜!お弁当と水菜はセットだと言っただろ!こっち向いて!」 「嫌!だって、触った事に変わりはないもの。しかも抱きつかれて、何だかんだ言いながら鼻の下伸びてるんだわ。」 「ないって!水菜がいなくなるのは一番嫌だから、怒っても良いし俺を嫌いでもいい。それでも側にいてくれ。本当にごめん。一生懸命作ってくれたサラダ、人にあげて…。深くは考えてなかった。ちゃんと考えて作ってくれてたのに、ごめん。」 「別にお弁当を人にあげるくらいで文句はないよ?毎日やられたら腹が立つけどね?それに、嫌いな人とずっと一緒にはいられないよ? 私、そこまで鈍感じゃない。側にいるのは好きだからだよ? だから私の期待を裏切らないでね!」 「おう!任せとけ!」 簡単に返事をする真に、水菜は疑いの目を向ける。 「本当に分かっているのかなぁ?」 「分かってる!!」 と、断言していい、真は続けた。 「浮気しない事、元気でいる事…水菜をずっと好きでいる事、だろ?」 「うん、まぁ、正解?」 「まぁって何だよ?大正解だろ?」 不満そうに言い、お弁当箱を片付ける。 「正解を積み重ねて、いつか大正解を出す日が来るんだよ? ずっと一緒何だから慌てずにね?」 ポットからコーヒーを注ぎ、水菜は笑顔でいうとカップを真に渡した。 受け取り、飲みながら聞く。 「仕事、どっちで行くんだ?結局…。」 「出来るだけ、会社総出になりそうな仕事に関してのスケジュールは把握しようっていう事になった。 林田君は外回りが多いから、毎回チームに確認に行くのは文句が出たと、梨香は言ってたけど、立花さん自身が管理してるらしくて、上がしている事を秘書が出来ないはずはないって、黙らせたって。 梨香は怒ると怖い…。」 水菜が言うと真はケタケタと笑う。 「あれはあれで反省してんだよ。秘書検定行こうかなとか、言ってた事あるしな?辞められたら嫌だから強くも命令系でも言えなくて、おまけに副社長に守られてるみたいな事を、二人目復帰後、主婦連中に言われてた。 男の営業も梨香に注意されて、副社長が注意するならわかるけど…とかな? だから強く言えなかった。水菜に迷惑かけたって反省してた。」 「梨香は悪くない。ていうか…梨香でも言われるんだね? 結婚しちゃうと立場を利用していると思われちゃうのかな? そんなつもりはないんだけどな……。」 悲しそうに水菜は呟いた。 「いいんじゃない?利用しても。俺は、七光りだろうが旦那の口利きだろうが、利用出来るものはどんどんしていいと思う。 いくら利用しても、出来ない奴は結局出来ないし、出来る奴はそれをチャンスに変えてちゃんと結果を出す。 在るもの使って何が悪い?だって、在るんだからさ?」 当たり前のように真が言うので、水菜は吹き出した。 この前向きなポジティブさにどれほど救われてきたか。 「真?」 「んー?何?」 「大好き。」 「ぶっ、!……コーヒー出ちゃった。」 「汚いなぁ…。はい、拭いて。」 お手拭きを渡すと、顔や手を拭きながら、 「もう一回言って?」 と、真は言う。 「また明日ね?」 「え?一日一回なのか?おかしい、水菜…。異議を申し立てる!」 「却下で〜す。ほら、そろそろ休憩時間終わりますよ?帰りますよ?」 「待て!異議だ!異議!」 水菜は無視してスタスタと歩いて行った。
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