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第1章
「碧馬、二十歳の誕生日おめでとう」
「ありがとう、リュカ」
「おめーとー、ママ」
「ありがとう、マッティア」
両頬にキスをされて、碧馬はくすぐったくて肩をすくめた。
「これで碧馬もようやく成人したのか」
テーブルの上には碧馬の好きなチキンの丸焼きと羊と野菜の煮込み、クルミのパンとデザートに果物やドライフルーツの入ったケーキまで用意されている。
「て言っても、ここではとっくに成人してるだろ」
ここの成人年齢は十六歳だ。しかし碧馬の生まれ故郷では二十歳が成人年齢だと知って、この日にお祝いをしようと言いだしたのはリュカだった。
それはもう三年も前の話で、碧馬は忘れていたのだがリュカは覚えていた。
覚えてくれていたことがとても嬉しい。
ケンタウルスの夫と自分が産んだ子供に挟まれて成人を迎えるなんて、日本にいたころの自分は考えたこともなかった。
この三年間のことを思うと、碧馬はいまだに夢を見ているみたいだと思う。
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