風の国

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風の国

お伽話の王子様にみんな憧れているけれど、現実の王子様はロクなもんじゃない。 「洗濯物、取りに来ましたー」 リラは街中の家や店から洗濯物を回収すると、川まで行ってガシガシ洗っては、濡れた衣服や布切れを担いで各持ち主の所定の場所に干していく。 目元を隠せるほどに伸びた前髪が汗で顔に張り付いてくるが気にしない。目元とは逆に短髪により露わになっている首に心地良い風を感じる。 午前中は川と街中の往復であっという間に過ぎ去ってしまった。 お昼休憩を挟んだら、次はいくつかのお店の掃除を手伝う。 それを昼間まで行って、やっとその日を暮らせるだけのお金が手に入る。 できればもう少し稼ぎのいい仕事ができればとも思うのだが、学もない上に顔も出したくない、たかだか15歳の小娘には小遣い程度の雑用と言えどあるだけマシだった。 今日の仕事を終えて空を見上げる。 この日の高さなら、友人のスリフはまだ働いているだろうから、彼女のいるパン屋へ向かった。
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