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 人、人、人、人……人の山。  霊長目、人科、ホモサピエンス。  どこに行ってもあふれかえっているこの厚かましい生物達の群れは、今やそれが生息していない場所を見出すことの方が困難な程に地球全域にはびこっている。  こんなにたくさんいる人間達なのだから、その中に特殊な能力を持つ者が混ざっていたからと言って、()したる疑問も起こるまい。  御霊谷(みくりや)実嗣(さねつぐ)──。  見たところ、普通の高校生に見える彼も、実はそんな人間達のうちの一人である。  一週間のうち、三日学校に顔を見せれば良い方の彼は、三白眼の険しい顔つきをした、俗に言う不良青年だ。  今回で二度目の高校二年の春。  去年まで肩を並べて授業を受けていたクラスメート達は、いつの間にやら上級生。別にそれが気になって仕方ないという程、彼の精神はデリケートに出来てやしないが、まるで無関心を装える程寛大にも出来てはいなかった。  実はこう見えて彼、密かに我が身の敗因を考えていたりするのだ。
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