2105人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
「あ、周くん? 宇津木 周じゃないか!
み、美緒ちゃんの父親なのか?
亡くなった? 事故? あの事故なのか?」
お父さんは激しく動揺している様子だった。
「親父?どうしたんだ! 大丈夫か?」
「「「お父さん?」」」
「落ち着いてください、お父さん、
宇津木 周を、父をご存知なんですか?」
「ああ、知ってる!
私の命の恩人なんだ!
海外旅行中のバスの事故から救ってくれたのは彼なんだ。
たまたま、旅の途中で一緒になって、しばらく行動を共にしていた。
事故で大ケガをした私をバスから引っ張りだしてくれたんだ、周くんが。
私は、救助され病院に搬送された。
その後、彼に何が?」
「母から聞いた話しでは、
バスの事故で一度は助かった父は、何人もの人をバスから運び出して、助けたそうなんです。
助けた小さな子どもの母親が、バスにとり残されてると知った父は、彼女を助けようとバスに戻り、その直後にバスが炎上して亡くなったと聞きました。」
お父さんは、
「そんな、そんなことがあったなんて!
帰国したら結婚すると言っていた!
いつか、いつか会いたいと、会って礼を言いたかったんだっ…、うっ、う〜っ…、」
声を上げて泣くお父さんの姿に、
みんな息を呑み、黙り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!