熱中症

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高校教師になって3年。 押し付けられるように、陸部の顧問になって3年。 そして…3回目の夏合宿…。 少年から青年に変わっていく彼等と過ごす、3度目の夏…。 寝不足でボンヤリする頭を揺すって気持ちを引き締めた。グラウンドの隅にある木陰に、 休憩場所を用意してから、車に積んである荷物を運んだ。 それも一段落した頃、宿から走ってきた部員達が賑やかに笑いながらストレッチを始めた。 俺は炎天下の下に立ち、彼等の姿を目を細めて眺めた。 「安村先生、こっち、こっち!日陰入って。 いやぁ…今日も…一段と暑いですね。」 「えぇ、本当に。 参りますね、こうも暑いと…。」 寝不足で欠伸が出そうになるのを堪えながら、コーチの坂崎さんと談笑していると、キャプテンの石崎がこちらへ向かって走って来た。 「コーチ、アップ終わりました。 予定通りのメニューで進めますか?」 「今行くから、集合かけといて。」 「はい。」 去り際に、静かに微笑んだ石崎と目が合ったが、先に視線を反らしたのは、俺だった。 俺の寝不足の原因は、何事もなかったように走り去り、俺は、その後ろ姿を見送った。
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