ポルターガイストの家

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 この日なにが起きたのかを説明するのが大変で、子供の語彙力の限界と疲れを感じながらも、とにかくあるがままに起きた詳細を説明することを何度も繰り返した。兄、私、妹、幼馴染の四人の口から語られる不思議な話を、大人達は呆れたような顔をして聞いていた。  犬は、保健所で始末するという話になったのを、幼馴染とそのお父さんの人柄によって回避されて、代わりに大きな檻を作ってそこに閉じ込めるという措置が取られた。こうすれば人に噛みつくことはもうないだろうということのようである。  彼女の怪我は傷が小さいので割と早く治った。  シャッターの音が何度もしていたと言ったら、母が車庫の奥にある地下室に置いたままだったガラスケース入りの日本人形をお寺に持って行ったと聞かされた。  お坊さん曰く、この人形に良からぬ霊が入っていたので、お祓いした後に焼却処分したと、しばらくしてから教えて貰えた。  その家ではその後、あれほどの霊障は起きなかったけれど。でも、目の前に大きな病院が建ってからは頻繁に幽霊を目撃することが増えたので、そもそも霊道でもある場所に家を建ててしまったのかもしれない、と勝手に思っている。  思春期が始まる子供が三人いる我が家で起きたポルターガイスト現象は、親子のコミュニケーション不足による弊害だった、と言えるのかもしれない。行き場を失った感情が積もると、その思念に引き寄せられた浮遊霊が物体を動かすほど力を蓄える、なんて仮説を立ててみた。それを立証する術を知らないので、あくまで仮説だが。人間の脳は、とにかく空白を埋めたがると何かの本で読んだ。理由や原因を探って、自分のみに起きたことを納得したがる生き物なのだ。  その家は病院に買い取られ、今も病院の休憩所として当時の姿のままそこに在り続けていると聞く。風の噂では、頻繁に霊が出ると言われているのだとか―――。  了
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