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「イッショニクルノヨー」 「イッショニイクノヨー」 「絶対イヤヨー、ってあらやだわ!」  うっかり同調してしまった。恥ずかしさについ口を押さえたおまきへ、グレーィ達は一気にアミを被せた。 「キャッ! ちょっと何すんのよっ、アタシ魚じゃないわよっ!」 「オサカナヨリダイニンキナノヨー」 「オサカナヨリタカクウレルノヨー」 「なにっ? そうか、そういうことか、アンタ達、デブス猫の密売人なのね!」  おまきはすべてを悟った。  このままでは自分も危ない。短い両手足を振り回して脱出を試みるが、グレーィ達の力は見た目よりも強い。おまきは軽々とすくい上げられてしまった。 「ホカクー」 「ヨロピクー」 「むっ、ムカツクー!」  怒りをあらわにバタバタもがき、自慢の鋭い爪で網を切ろうとするがびくともしない。グレーィ達はそんなおまきに構わず、よっこらしょと網を担いだ。 「イクワヨー」 「イイワヨー」 「ちょ待、ちょ待ーっっ!」  グレーィ達は走り出し、住宅街を出て畑へ入り、南へ向かった。周囲の景色が後方へ一気に流れていく。車並みのスピードだ。グレーィのくせに加速装置でも使っているのだろうか。  これはヤバイ。本当に連れ去られてしまいそうだ。 「くっそお、アタシを捕まえるなんて百年早いんだからねっ」  憎々しく吐き捨てると、おまきは耳を伏せ、天に向かって叫んだ。 「ええー、ちょんわちょんわちょんわちょんわ!」  お願い、届いてと強く祈る。するとグレーィ達にも聞こえたようで、足を止めないまま顔だけ振り返った。 「ソレハーダメヨー」 「ソレハーナシヨー」 「うっさい銀色ハゲ、もう遅いわよ」  おまきはほくそ笑んだ。  空を切りやってくる相棒の気配がする。この急速覚醒ワードは三分しか効かないが、あいつの実力なら充分な時間だ。  風切り音がぐんぐん近づき、すぐに脇を抜けて回り込んでくる。グレーィ達は急停止しておまきを放り出した。
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