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Σ(OωO )ギク.。oO(つけてないぞ!)
さて、周りも固まってきて、本人の警戒心も少しずつ解けてきたところだし、次の段階へ進みますか。
名付けて、「一緒に帰ろう作戦」!!!って、そのまんま過ぎるか。
まず最初は理由を付けて。あの勉強会から1週間。思いもしなかったネタができたのだ。
教室の前で待つ。……なんだかストーカーをしているようで少し気まずい。
それほど待たずに、いつもの面子で優月がでてきた。
「あれっ、こんな時間にめずらしいじゃーん」
「……はっ!まさか優月の家を突き止めるべく!?」
「いやいや、近いようで遠いよ」
「……近いの?」
「まって、そんな顔して引かないで」
相変わらず騒々しい。話しながら、靴を履き替えて外に出る。今までクラス内か二人きりでしか話したことがなかったからよく分からなかったけど、やっぱり優月は人目を引く。
嫉妬の目を向ける女子たちと惹かれている男子たちに、それぞれ邪気のない笑顔を向けると、そそくさと目線を逸らせた。罪悪感を煽る方法としては最も効果的で善な方法だ。
まぁ、俺自身は気を引くために近づいているのだが。
「あれ、理央と芽依はそっちなの?」
校門で、理央と芽依、優月と俺でわかれてしまった。
「家の方向違うんだよな」
「優月をたのんだ」
あー、これは予想外。図らずも優月と二人。
「頼まれちゃった」
「家、叶多より遠いから。遠慮する」
「つれないなー」
「それで?」
「ん?」
何か言いたげに鋭い視線をおくってくる。なんか悪いことしたか?俺。
「どうせ口実があるんでしょ?用事が無いのにいきなり一緒に帰る、なんて出来ると確信できないことをあなたがしようと思うはずないし」
「褒められてるのか貶されてるのかわかんねーな」
「いいから早く本題に入れば?」
「口実なんてないって言ったら?」
「離れて歩こうか」
「うそうそ!!口実、あります」
このクールな童顔少女にはなかなか勝てない。さっきの笑顔だって効かないだろう。
「……同じ猫かぶり同士は無効だってね」
「なんか言った?」
「なんでもございません」
ボソッと言った言葉を拾われてしまった。うーん、優しくしたところで鼻で笑われるだろうし、どうしたらこの少女はオチるんだろうか。
「先週の定期テストの結果、今日返されたじゃん?」
「そうね。まさか……!」
「絶望的な顔しないで、なんでそう悪い方向にいくのさ」
「叶多からいい知らせなんて来たことないから」
「そうだったっけ?」
ごそごそとバックの中を漁る。目的の紙は化学の教科書の中に挟まっていた。少し付いてしまったしわを引っ張ってのばす。
「これ!」
「……私が見ていいの?」
「優月だから見て欲しいの!」
俺の成績表を受け取り、数秒。不思議そうに眺めていた。
「前回どれぐらいだっけ?」
「総合156位。合計点は、あれだよあれ。覚えてない」
「これ、58位って書いてあるけど?」
「おう!100点ぐらい上がったんじゃね?」
「願ったの?」
「願ってない」
「ほんと?」
「成績は最低限取れればいいと思ってるから」
なんだか納得がいかない、というふうに成績表を返された。もっと反応して欲しかったのに。
「願ってもなかったのにあがったんだよ」
「それは、純粋に勉強したから、ってことよね。……頑張ったのよね?」
「優月に言われたところだけでもやっておこうとおもっ……て?」
「えらいえらい、この調子で頑張りなさい」
ぽんぽんと頭を撫でられて、見たこともないような微笑みを向けられた。信じられない現象だった。理解が追いつかない。
見た目は姉、と言うよりも明らかに妹だったが、その姿は「お姉ちゃん」と呼ぶにふさわしかった。年の離れた妹弟でもいるのか?
「……あの、さ。普段だったら絶対止めたりしないんだけどさ。ここ、通学路だよ?」
通行人はチラチラと俺たちを見ながら過ぎ去っていった。道の真ん中でロリ美少女が自分の背丈をこえる地味男子をにこにこと撫でているという、妙な構図だった。
「……っ!!!」
「ぐふっ」
自分のやってることに気づいたのか、みるみる頬は紅く染まり。優しく頭を撫でていた手は滑らかにみぞおちを殴る拳へと化した。
い、今のはいいのがはいった。
「弟!そう弟がいるから!あまりに子供っぽい表情してたから間違えたの!」
「こんなことされるんだったら弟になりたいなぁ」
「こんな弟はいらない」
「この関係もこれはこれでオイシイものがあるよネ」
「だったらずっと「知り合い」のままでいようか」
「せめて友達って言って!?」
「えっ、そうなの?」
「えっ……」
そんなことを話している間に、家の前に着いてしまった。短い通学時間を少々憎んだのはこれが初めてだ。
「じゃあね」
「家まで送ろうか?任されたし」
「いつも1人で帰ってるしいらない。それに、「任されたし」なんでしょ?」
「は?ちょ、どういう意、味……?」
捨て台詞のようにそれだけ言って、スタスタと行ってしまった。
それは怒っていると言うよりも、
(拗ねている……?)
そんなかんじだった。
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