359人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
確か、先程会った際にも同じことを言われなかったか――?
遼二はともかく、紫月の方はものすごく不思議そうに眉をしかめた程だった。
「あんた、そういえばさっきも俺ンこと見てそう言ったよな? ……もしかして俺って、あんたの親父さんに似てるとか?」
遼二が驚かさないようにと親しげにそう訊くと、ようやくと警戒心が解けたのか、男はおずおずとしながらも口を開いた。
「あの……すみません……少し父に……似ていたものですから。あの、僕はどうして……その……」
頼りなげな声の感じからしても心許なく、なぜ自分がここでこうしているのかが理解できないようである。
「それよりあんたさ、身体の具合はどうなんだ? どっか痛むとか辛えとか……あるか?」
とにかくも容態が一番だ。真剣な表情でそう訊いた遼二に安堵を覚えたのか、
「あ……大丈夫です。痛むとかはありません」
男は素直に答えてみせた。
最初のコメントを投稿しよう!