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湖は学校から歩いて20分くらいみたいだ。小さい湖だけど、水が澄んでいて綺麗だ。青い小鳥が美しい鳴き声を上げている。
カイ先生と学校のことを話しながら歩いた。たくさん笑った。
湖のほとりに腰掛けて休憩した。カイ先生が水筒のお茶を飲ませてくれた。
いい香りのお茶だった。心が安らぐ。
「ありがとうございます。何も持たずにすみません」
僕は本当に何も持っていない。お金を稼げるようになれるようにがんばろう。
カイ先生に、気になっていたことを教えてもらおう。
「カイ先生、番はどうやって探すんですか?」
「あなたのいた館でΩのヒトを買ってくるのが一般的です。獣人は20歳になれば、ヒトを買うことができます。私もそのために貯金してます」
カイ先生も20歳になったら、番を得るんだな…なんだか胸の中がモヤモヤする。
「Ωのヒトは買われるだけで、自分の番を選べないということですか?」
「いえ、買うといってもヒト本人と両親の同意がないと買えません。
それに、発情期に獣人がヒトのうなじを噛まないと番にはならないので、買われたあと番になるまでの間に大切にしないと思われればヒトが帰ってしまうこともあります」
買うと言っても、僕が元いた世界の結納金みたいなものかな。本当にΩは大切にされているようだ。
「獣人はどのヒトと番になるか、どうやってわかるんですか?」
「一目見たときから、心が奪われます。愛おしくて、苦しいです」
カイ先生は綺麗な水色の目で、僕をじっと見ている。
「カイ先生はいつ20歳になって番を得られるんですか?」
「私は来月です」
「よい方に会えるといいですね」
来月、カイ先生も番を得る…おめでたいことなのに…僕はちゃんと笑顔になれたかな。
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