Number 2

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「いいですね。ただ、ちょっとだけ時間をいただいてもよろしいでしょうか?」 こめかみあたりがずきずき疼いている。戦いで脳みそフル動員したせいなだろう、このままにしておくと吐き気に変わりそうだ。最悪病院に行かなければならない。 今すぐ動くのは難しい。少し休まなければ。だが、私の表情は至って普通なのだろう。葛城は『?』って顔している。 「実は、偏頭痛持ちなんです。薬ですぐに落ち着きますので」 『なんでもないです』と強がらなくなっただけちょっと進歩か。 「あぁ。頭使ったもんなぁ」 「私が持ちうるものを絞り出しましたからね!」 冗談めかして笑って葛城から一旦離れる。急いでデスクに戻って頭痛薬を内服する。お願い、早く効いて。スマホを持ってオフィスビルを出て外の風にあたる。海風なのでちょっと潮っぽさはあるが悪くない。電話をかける。 「お疲れー。どうした?」 広瀬は数コールで出た。 「別に。まだ仕事中だった?」 「これから帰ろうとしてるところ」 「そっか。お疲れ。もう慣れた?」 「うん。こっちはね、全然大丈夫よ。穏やか」 「はー。まったくあんたって器用だねー。羨ましいわぁ」 私より広瀬の方がアメリカにいる期間が長く、もともと人脈づくりに余念がないおかげで新しい場所に入っていってもすんなりやれているらしい。毎日血を流している私とは大違いだ。 「どこにいる?」 「会社」 「迎えに行こうか?」 「これからご飯行くから」 「遅くなる?」 「たぶん」 「あんま飲むなよ」 「大丈夫。スパークリングウォーターでしのぐから」 「一杯くらい付き合っといたら? 仲良くなりたいんだろ?」 「そっか」 あぁ、いい声だな……と改めて感じる。 目を閉じて、一声一声をじっくり聞いているとだんだん気分が良くなっていく。他人と話していて疲れることは多々あれど、癒されるってなかなかない。よかった、薬も効いてきている。 「わ!?」 電話を終えると葛城が真横に立っていてびっくりて仰け反った。会話、聞かれた? 私、葛城の悪口言ってないよね……? 言ってない、大丈夫。 「頭痛薬、いる?」 「えっ」 その手には薬とペットボトルの水が。わざわざ持ってきてくれたらしい。そしてわざわざ外まで探しに来てくれたのか。 「ありがとうございます」 「水もな」 「わぁ! 助かります!」 薬も水ももう不要だが、こういう人の親切はとりあえずめいっぱい喜んで受け取っておいた方がいいと経験で知っている。しかし、これまでの酷い態度とは打って変わって、意外に良い奴なのか? 「今日は止めときましょ」 「えっ。しかし」 「別に慌てなくてもいいし」 「では、また明日にでも行きましょう!」 「おっけー。テキトーな店見繕っといて」 明日飲みに行く約束をして今日はお開きになった。 すぐに広瀬に電話して一緒に帰ることにした。
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