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翌朝、皆で朝食を頂いて、少ししてからトーコは大神家を後にした。
心の奥が妙にホンワカしていた。
朝起きて一階に降りると、松田君と夏子がキッチンのシンクに並んでいて、仲良く笑いながら、後片付けをしているのを見たからかも知れない。
(いや、お前も手伝えよって話なんだけど、二人の邪魔をするのもさあ…ゴニョゴニョ byトーコ)
そういえば、彼女の夫、アキトは結局、朝になっても実家へは戻らなかった。何でも、例の本社役員の説得に朝方までかかったらしく、会社で少し仮眠して、自宅の方へ戻ることにしたらしい。
先ほどトーコのスマホに着信があった。
今、トーコは昨日と同じ道のりを、逆方向に歩いている。
今朝には満開となった河原の桜が、お日様の光をを浴びて白く輝いている。
昨夜、誰にも見せられなかった心の奥の弱い部分を、夏子さんに聞いてもらえたお陰で、自分は、よりはっきりと腹を括ることができた。
(ナゼか途中から記憶が曖昧なんだけれども)
ちょうどこの春の気候みたいに、まだまだ自分たちは不安定だし、不安だって尽きないけれども。
願わくば、互いが同じくらい必要で大切な、そうして高め合っていける、そんな関係をめざしたい。
…なーんて、少し大袈裟に考えたりして。
貴方に私は、これからもたくさん教わることがあるだろう。
でもね、それと同じくらい、私から貴方に伝えたい。
さあ、早く家に帰らなくっちゃ。
アキトさんが、私の帰りを待ってる。
《Z おわり》
《全話 了》
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